転職理由の書き方完全ガイド|好印象を与える伝え方と例文

転職理由

「転職理由って、どこまで本音で話していいんだろう」「履歴書と面接で、同じことを言えばいいのか、少し変えた方がいいのか分からない」。転職活動を始めると、多くの人がここで立ち止まります。ネットを見ると、「本音は隠した方がいい」「いや、正直に話すべきだ」など、真逆の意見もたくさん出てきて、混乱して当然です。

最初に結論を言うと、転職理由は「ウソをつかずに、相手に伝わりやすい形に編集するもの」です。この「編集のやり方」が分かると、履歴書も職務経歴書も面接の受け答えも、一本の筋が通った状態でそろえることができます。

ここから先は、僕自身の失敗談もまじえながら、転職理由の考え方・書き方・具体的な例文まで、順番に説明していきます。

転職理由で合否が変わる?採用側が見ているポイント

転職理由を面接で伝える場面のイメージイラスト

企業が転職理由から何を見ているのか

採用担当者は、転職理由の中からいくつかの点を読み取ろうとしています。一つめは、「この人はまた同じ理由ですぐ辞めてしまわないだろうか」という不安です。前の会社を辞めた理由が、そのまま次の会社でも起こりそうだと感じると、採用は慎重になります。

二つめは、「これまでの経歴や志望動機と話がつながっているかどうか」です。書類では立派なことを書いているのに、転職理由だけ急に別の方向を向いていると、「本音は別なのかな」と疑われてしまいます。

三つめは、「どんな価値観を持って働く人なのか」です。お金なのか、成長なのか、安定なのか、人間関係なのか。何を大事にする人なのかが、転職理由には強く出ます。こうして見ると、転職理由はただの「辞めた理由」ではなく、「あなたの仕事観の要約」として見られている、ということが分かると思います。

僕の一言(体験談)

僕がまだ転職に不慣れだったころ、面接でついこう言ってしまいました。「前職は残業が多くて、プライベートの時間が取れなくなってきまして…」。事実ではあるのですが、言い方がストレートすぎました。面接官は一瞬笑顔を見せたあと、「当社も繁忙期は21時くらいまで残る日が続くことがありますが、その点はいかがでしょうか」と聞いてきました。

その瞬間、自分が「残業が嫌で逃げてきた人」というラベルを貼られた気がしました。本当は、「ダラダラ残業前提のやり方」への不満が強かったのですが、言葉の選び方一つで伝わり方は大きく変わってしまいます。

この経験から強く感じたのは、「何が嫌だったのか」だけでは足りないということです。「だから自分は今後どういう環境で働きたいのか」まで一緒に話さないと、相手にはうまく伝わりません。

本音と建前のバランスをどう取るか

本音を全部さらけ出すと、ただの愚痴になってしまうことがあります。かといって、きれいごとだけを並べると、「どこか嘘っぽい」と見抜かれてしまいます。

バランスを取るコツは、とてもシンプルです。まず、事実そのものはねじ曲げないこと。ウソをつくと、面接の深掘りでボロが出やすくなります。そのうえで、相手を責める言い方や、感情的な表現を少し丸くします。そして最後に、「だから次はこんな環境で働きたい」「だからこう成長したい」という未来の話で締めます。

たとえば「上司と合わず、給与も低くて将来性を感じなかったので辞めました」という言い方だと、どうしても不平不満が前面に出てしまいます。これを少し整えると、次のような言い方に変えられます。

前職では、上司との方針の違いや、評価基準が見えづらいことから、自分の成長やキャリアの描き方に不安を感じるようになりました。そこで、成果と役割がより明確に評価される環境で、長期的にキャリアを築きたいと考え、転職を決意しました。

事実そのものはあまり変えていませんが、「評価されない不満」ではなく「成長したい気持ち」が中心になっているので、印象はだいぶ違ってきます。

「転職理由」と「志望動機」の違いを先に整理する

ここで一度、「転職理由」と「志望動機」の違いをはっきりさせておきましょう。転職理由は、「なぜ今の会社から離れたいのか」という過去側の話です。志望動機は、「なぜこの会社で働きたいのか」という未来側の話です。

この二つが混ざってしまうと、「今の会社が嫌だから御社に来ました」という、あまり魅力的ではないメッセージになってしまいます。イメージとしては、転職理由では「今の環境と自分の間にどんなズレがあるか」を説明し、志望動機では「そのズレを、応募先の会社ならどう埋められると思ったか」を語る、という役割分担です。

僕の一言(体験談・その2)

昔の僕は、この二つをきれいに分けて考えられていませんでした。面接で、「前職では新規事業に関わる機会が少なかったので、御社の新規サービスに興味を持ちました」と話したところ、面接官にこう言われました。

「それだと、“新規事業があればどこでもいい”というようにも聞こえますね」

たしかに、その通りでした。「なぜ今の会社から動きたいのか」と「なぜこの会社なのか」が、すべて一文に押し込められていて、結局どちらも薄くなっていたのです。

そこで僕は、ノートを左右に分けて書き出してみました。左側には「前職で感じたモヤモヤ」、右側には「次の会社で叶えたいこと」。その右側の内容に、応募先企業の特徴を一つひとつ結びつけていくと、「転職理由」と「志望動機」が自然と分かれていきました。

この作業は少し手間ですが、一度やっておくと、自分の考えも整理されますし、面接で急に聞かれたときにもブレにくくなります。

好印象な転職理由の基本構成(結論 → 理由 → 学び → 未来)

結論・理由・学び・未来へと進んでいく転職理由の構成イメージイラスト

転職理由を考えるとき、いきなり長文を書き始めると、ほぼ確実に迷子になります。そこでおすすめなのが、「結論 → 理由 → 学び → 未来」という四つの流れで考える方法です。

最初に、転職理由の結論を一文でまとめます。たとえば「キャリアアップのため」「働き方を見直したいと考えたため」など、シンプルで構いません。この一文は、面接で最初に答えるときの「入り口の言葉」にもなります。

次に、その結論に至った具体的な出来事や状況を書きます。「新しいことに挑戦する機会が少なかった」「長時間労働が続き、学習の時間が取れなくなった」など、事実を落ち着いて整理していきます。

そのあとで、「その経験から何を学んだか」を短く入れます。「自分は〇〇を大事にしたいのだと気付いた」「□□のような環境のほうが力を発揮できると分かった」といった部分です。

最後に、「だからこそ、次はこういう環境で働きたい」という未来の話で締めます。ここをきちんと言えると、相手は「この人は過去を振り返るだけでなく、未来のことも考えている」と受け取ってくれます。

ネガティブな事実をポジティブに言い換えるときも、この流れを意識すると楽になります。たとえば「残業が多い職場だった」という事実は、「学習やスキルアップの時間が取りにくく、長期的な成長に不安を感じた」と言い換えることができます。「給料が低い」は、「成果と報酬の結びつきが弱く、モチベーションを保つことが難しかった」としても伝わります。

大事なのは、「何が嫌だったか」で終わらず、「自分は何を大事にしたいのか」という価値観の話に変えていくことです。

履歴書に転職理由を書くときのコツ

履歴書に転職理由を書き込んでいるイメージイラスト

履歴書の欄は、かなりスペースが限られています。ここでは、短く・分かりやすく・前向きに、という三つを意識してください。長々と書く必要はありません。二〜三行程度で、「転職しようと思った理由」と「今後どんな環境で働きたいか」が軽く伝われば、十分です。

よくある「一身上の都合により退職」という一文は、たしかに無難ですが、会社側からすると中身が何も分かりません。中途採用では、「どんな環境なら長く働いてくれそうか」「どんな働き方を望んでいるか」を知りたいので、少しでも情報があった方が評価しやすくなります。

たとえば、ワークライフバランスを整えたい場合は、次のような書き方ができます。

長時間労働が続き、今後の働き方を見直したいと考えました。ワークライフバランスとスキルアップの両立ができる環境を求め、転職を決意いたしました。

短い文章ですが、ネガティブな言葉に頼らず、「働き方の見直し」と「成長」の二つを伝えられています。

職務経歴書に転職理由を書くときのコツ

職務経歴書に転職理由を書き込んでいるイメージイラスト

職務経歴書は、履歴書よりも少し詳しく書ける分、「ストーリー」とつなげやすいです。ここでは、「前職でどんな仕事をしてきたか」と「なぜその延長で転職しようと思ったのか」をセットで考えると、説得力が増します。

たとえば、営業職からIT企業のインサイドセールスに転職したい場合を考えてみます。

前職では、個人向け営業として新規開拓を担当していましたが、アナログな営業スタイルが中心で、デジタルツールを活用した効率的な営業活動に課題を感じていました。自身でもオンラインセミナーや書籍を通じて学習を進める中で、データを活用した営業に携わりたい気持ちが強くなり、IT業界でインサイドセールスとしてキャリアを築きたいと考え、転職を決意いたしました。

この文章では、「前の仕事でどんなことをしていたか」「どんな点に課題を感じたか」「自分でどんな努力をしたか」「それを踏まえて、どんな方向に進みたいか」が、自然な流れでつながっています。

自己PRやキャリアプランとの一貫性も意識してみましょう。自己PRでは「今できること」、転職理由では「今の環境で感じた限界や課題」、キャリアプランでは「これから伸ばしていきたいこと」を、それぞれ同じキーワードでつなげると、全体がきれいにまとまります。

面接で転職理由を話すときのポイント

面接で転職理由やエピソード、未来について話しているイメージイラスト

面接では、ほぼ確実に「前職を退職された理由を教えてください」と聞かれます。このときの答え方の流れも、基本は同じです。最初に、転職理由の結論を短く伝えます。次に、その理由を説明する具体的なエピソードを一つだけ出します。最後に、「だからこそ、次はこういう環境で働きたい」と未来の話で締めます。

なかには、「もっと本音の部分を教えてください」と、あえて踏み込んでくる面接官もいます。そのときは、愚痴を長く話してしまうのではなく、「たしかにこういう点がつらかった」と事実を認めたうえで、「その結果、自分には〇〇が大事だと分かった」という気づきのほうに話を持っていくと、印象がよくなります。

たとえば、人間関係がつらかったケースであれば、次のような話し方ができます。

正直なところ、上司とのコミュニケーションで行き違いを感じる場面が増えてきたのは事実です。ただ、それをきっかけに、自分はチームで意見を出し合いながら仕事を進める環境の方が力を発揮しやすいと分かりました。今後は、メンバー同士で改善提案ができる組織で働きたいと考え、転職を決意しています。

僕の一言(ネガティブ質問の体験談)

ある面接で、「前職で一番つらかったことは何ですか?」と聞かれました。そのときの僕は、聞かれたままに、残業、評価、上司の性格などを、感情を込めて長々と話してしまいました。

面接官は最後に、「ありがとうございました。応募書類から感じていた前向きさと、少しギャップがありました」と静かに言いました。この一言で、「これは落ちたな」とすぐに分かりました。

あとで振り返ると、面接官が知りたかったのは、「どれだけつらかったか」ではなく、その経験から自分が何を学び、どう変わろうとしているのか、という点だったのだと思います。

それ以来、ネガティブな質問をされても、まず事実を短く伝え、その中で自分の至らなかった点も少し認めるようにしました。そして、「だから今はこうしている」と現在の努力や工夫を話すようにしました。すると不思議なことに、むしろネガティブな話題のときほど、「よく考えている人だな」という印象を持ってもらえることが増えました。

よくあるパターン別・使いやすい転職理由の例文

キャリアアップ・働き方・人間関係・転居など代表的な転職理由をアイコンで表したイメージイラスト

ここでは、いくつか代表的なパターンの例文を紹介します。そのままコピペするのではなく、自分の状況に合わせて少し言葉を変えて使ってみてください。

まず、キャリアアップやスキルアップを理由にする場合です。

前職では法人営業として中小企業向けの新規開拓を担当していましたが、業務の幅が限られており、マーケティングや企画の領域にも挑戦したいと考えるようになりました。自分でもセミナー参加や資格取得を通じて知識を深める中で、より上流から顧客の課題解決に関わりたい思いが強くなり、転職を決意いたしました。

次に、ワークライフバランスを整えたい場合です。

前職では繁忙期には深夜残業や休日出勤が続くことが多く、健康面や長期的なキャリア形成に不安を感じるようになりました。今後は、一定のワークライフバランスを保ちながら、業務時間内で成果を出す働き方をしたいと考えています。そのうえで、御社の制度や働き方に魅力を感じ、これまでの経験を活かして長く貢献したいと考え、応募いたしました。

人間関係や職場環境に悩んだ場合も、言い方を工夫すれば前向きに伝えられます。

前職ではトップダウン型の文化が強く、業務改善の提案や意見交換の機会が限られていました。その中で、自分はチームで意見を出し合いながら仕事を進める環境のほうが力を発揮できると感じました。メンバー間のコミュニケーションを大切にされている御社の社風に共感し、応募いたしました。

結婚や転居、介護など、ライフイベントが理由になることもあります。

結婚を機に生活拠点が変わり、前職の勤務地までの通勤時間が片道二時間以上かかるようになりました。長期的に働き続けることを考えたとき、体力面・時間面での負担が大きく、通勤圏内で腰を据えて働ける環境を探す必要があると判断し、転職を決意いたしました。これまで培ってきた〇〇の経験を活かし、御社の□□業務に貢献したいと考えております。

転職理由を仕上げる前のチェックポイント

地平線の向こうで終わりに近づく一本の道をイメージした写真

最後に、応募書類を送る前や面接の前に、ぜひ見直してほしいポイントを三つお伝えします。

一つめは、ネガティブな言葉がそのまま残っていないかどうかです。「安い」「最悪」「合わない」など、感情だけが強く出ている言葉になっていないかをチェックしてみてください。意味として必要なら、もう少し柔らかい表現に言い換えてみましょう。

二つめは、志望動機と矛盾していないかどうかです。転職理由と志望動機を紙に印刷して、続けて読んでみてください。一つのストーリーのように流れていれば問題ありません。途中で話が途切れたり、「さっきと言っていることが違うな」と感じたら、どちらかを調整してみましょう。

三つめは、「会社の悪いところ」で話が終わっていないかどうかです。文章の最後が、「だから辞めました」で終わっていると、どうしても後ろ向きな印象になります。「だからこそ、次はこういう環境で働きたい」と、必ず未来の話で締めるようにしてみてください。

僕の一言(まとめの体験談)

僕自身、何度か転職活動を経験して強く感じたのは、「転職理由を言葉にする作業そのものが、一番きつい」ということでした。自分の弱さも、会社への不満も、将来への不安も、全部いったん目の前に並べることになります。正直、気分のいい作業ではありません。途中でノートを閉じたくなったことも何度もあります。

でも、不思議なもので、ここから逃げずに言葉にしていくと、自分の中に一本の軸のようなものが見えてきます。「自分はどんな環境だと頑張れるのか」「何をされるとつらいのか」「それでも、どんな価値観だけは手放したくないのか」。この軸がはっきりすると、転職活動そのものが少し楽になりますし、転職したあとの迷いも減っていきます。

あなたが考える転職理由も、「ただの辞める理由」ではなく、「これからどう生きていくかを一度立ち止まって考えた結果」として、ことばにしてみてください。その文章は、企業に出すためだけのものではなく、これからの働き方を決める、あなただけのコンパスにもなってくれるはずです。

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