年収交渉はお願いではなく、期待値の整合。A4一枚の90日プランと役割定義で、ワクワクを正式な約束に変える方法を体験談と本音で解説。
会議室の灯りを半分だけ落として、A4一枚を真ん中に置く。そこには、90日で動かすKPIと、あなたの役割の輪郭が、手描きの矢印でつながっている。ペンのインクが乾く音すら勇ましい。年収交渉は、胸を張って未来を選ぶ時間だ。お願いではない。挑発でもない。未来の自分に「任せろ」と言う、静かな決起集会だ。数字が、夢の味方をする瞬間を、僕は何度も見てきた。
報酬の川上:エージェントの成功報酬を知る

転職エージェントの報酬は、企業が支払う成功報酬(理論年収の概ね20〜35%)。多くの案件で返金条項(返戻)もある。だから企業もエージェントも「活躍し続ける見込み」のある人を求める。交渉は「もっとください」では弱い。「その年収で企業が手に入れる安心(再現性・速度・リスクヘッジ)」を示す方が強い。
僕の意見:相場は“地図”でしかない。勝敗を分けるのは「役割×数字×時間」の設計図を出せるかどうかだ。
総額年収で読む:財布と体温を同時に軽くする

年収は固定給・賞与(固定/変動)・残業(みなし/実績)・各種手当・在宅/通勤コスト・SO・退職金・学習費などの総額で比較しよう。通勤時間が短くなることで生まれる“自由の分”も価値だ。
体験談①:下がったのに笑っていたNさん
現年収650→提示620で見た目はダウン。ただし残業40→20、通勤70分→15分、SO付与、在宅装備・学習費支給。総額で+40万、可処分時間は週+6時間。半年後のNさんは「毎日が軽い」と言った。暮らしの呼吸まで含めて読むと、年収の輪郭は変わる。
黄金タイムライン:いつ、何を言うか

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書類提出前:レンジの合意
「御社の過去採用実績から当該ポジションは◯◯〜◯◯万円のレンジと理解しています。私の再現可能な強み(◯◯)と90日プラン骨子(◯◯KPIを◯→◯)を踏まえ、上限寄りの検討余地はありますか?」
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一次通過後:役割×KPIの言語合わせ
「一次で伺った責任範囲(例:MRR/解約率)を前提に、90日で◯◯を◯%改善する計画です。本役割がフィットするなら上限寄りでの議論をお願いできますか。」
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内定後:上限寄せ or 再評価条項
「90日プラン(添付)に基づき、3ヶ月レビューでKPI達成時は上限寄せ、未達時は現提示維持の再評価をお願いできますか。」
僕の意見:金額を“最後まで隠す”のは非効率。コース図を共有してから走ろう。礼儀と速度が同時に手に入る。
“何割上がる?”に答える:役割の半径を広げる

- 横移動×拡張小:+0〜10%
- 横移動×拡張中:+10〜20%
- 役割昇格(担当→リード/管理):+15〜35%
- P/L責任付与:+20〜50%
体験談②:半径を1ミリ広げて+80万(Hさん)
投資判断への関与を「スクリーニング→小額実証→投資委前処理」に仕組み化、KPIを「承認スループット」へ置換。役割の半径が明確になった瞬間、+80万。肩書きより半径。企業は実態に予算を配る。
“嘘をつかれないか?”を超える三つの器

- メールで合意要約(誰が見ても同じ意味)
- オファーレターで金額・役割・評価リズムを明文化
- 入社後90日レビューの議事録化(達成/未達/次の合意)
体験談③:言葉の温度と紙の温度
最終の熱量とオファーの金額差で不信寸前。90日レビュー条項を追加して「言葉」と「紙」を仲直りさせた。誰も嘘つきにならずに前進。
“やめとけ”のサイン:ワクワクを守る撤退基準

- レンジ明示を回避し続ける
- 役割の輪郭が最後まで曖昧
- 評価サイクル(誰が/いつ/何で)が不明
- オファー文書が遅い・修正が通らない
2つ以上なら静かに距離を取る。交渉は“縁を失う”ためでなく、“縁を見極める”ためにある。
年代・属性別の勝ち筋(体験談つき)

20代:速さの証拠で上限寄せ(Kくん)
SQL30問ログ、仮説メモ、簡易ダッシュボードを成果物化。推薦文を「学習サイクルの加速」で開始。提示は中位だったが、到達時上限/未達中位の可逆で承諾→3ヶ月後に上限寄せ。若さは燃料、燃焼室は設計図。
30代:三枚の図で腹落ち(Mさん)
成果の時系列、組織図と役割、KPI前後の三枚で推薦文を“会議の言葉”に翻訳。最終で「明日の朝会を1分で」答え、+70万。派手さより、明日動く整った言葉。
40代:育てる力を定量化(Sさん)
1on1頻度、独り立ち日数短縮、監査指摘タグ化→再発防止件数。ホワイトボードで「学習速度の上げ方」を説明。条件見直し+100万。四十代のワクワクは翻訳の技術に宿る。
女性(20〜40代):運用の人数を先に確認(Aさん)
「時短OK」だが運用実績ゼロの年が判明。案件切替→会議時間帯と評価リズムを事前合意。中位提示+90日“仕組み化貢献”で上限寄せ条項、承諾。生活が味方になれば、仕事はさらに強くなる。
役割分担:あなた×担当者×二人で

- あなた:設計図のオーナー(数字の前後・役割・半期コミット)
- 担当者:市場相場と企業の好む論法の翻訳
- 二人で:タイムライン作成、メール文言、会議の“一行目”を磨く
僕の手癖:交渉の一行目は「この役割なら、粗利+2ptの再現性があります。」──先頭の一撃で、議論の地面が固まる。
メールの芯(三つの一行)

- 書類前
- レンジは◯◯〜◯◯万円と理解。責任範囲が◯◯なら上限寄せの検討余地はありますか。90日で◯◯KPIを◯→◯にします。
- 一次後
- 一次で合意した◯◯のKPIを前提に半期コミット(添付)を共有。本役割定義にて上限寄りの再検討をお願いします。
- 内定後
- 90日レビューにて到達時は上限寄せ、未達時は現提示で継続の可逆条件に合意いただければ即承諾します。
現年収の開示:誠実に、でも主導権は渡さない

虚偽はNG。ただし源泉徴収票は内定後に。早期は「現年収の根拠(基本給・賞与実績幅)」を共有し、数字の正しさと未来の可能性の両立を図る。年収は過去の点ではなく、未来の線で決まる。
“吊り上げ”に見えない礼儀
- 他社オファーを脅しに使わない
- 期限を守る/延長は早めに相談
- 「第一志望」は乱発せず、言うなら根拠を添える
交渉は信用の芸術。信用は年収の複利になる。
ホワイトボードの数式:選べる安心を出す

期待年収 ≒ 現年収 × 役割拡張率 × 再現性バッファ
(役割拡張率:意思決定半径・KPI責任・P/L寄与)
(再現性バッファ:過去→未来の翻訳の明瞭さ/資料化)
90日達成確度0.7/0.8/0.9の三通りで試算し、「選べる安心」として提示。企業は安心に予算を出す。あなたは安心を設計できる。
承諾前チェック:7項目

- 責任範囲(誰の何をどこまで)
- KPI(定義と期待値)
- 評価サイクル(誰が/いつ/どうやって)
- レンジ内訳(固定・変動・残業の扱い)
- 再評価条項(90日/半年レビューの見直し)
- 働き方の運用実績(会議時間・在宅・時短昇格)
- 書面化(オファー、JD、議事録)
ワーク:ワクワクを設計図に変える(15分)

- A4の真ん中にKPIを一つ(例:解約率)。左に「前」、右に「90日後」。上に役割、下にレビュー日(30/60/90)。
- メールの一行目(三種)をスマホに保存。
- 総額年収チェックリストを作る(固定・変動・残業・SO・在宅・通勤・学習費)。
親心メモ:お金の話は人を弱くしない。準備不足が人を弱くする。

夜、家族が寝静まったあと、キッチンの灯りでA4一枚を書こう。90日で何を、どの指標を、どれだけ動かすか。役割の輪郭、レビューの時期、再評価の条件。これを持って面談に行けば、面接の空気は味方になる。設計図を持った人は、静かに、でも確実に条件を上げていく。
今日の一歩:ワクワク点火

- KPIひとつを決めて、前→90日後を書き出す。
- 役割の半径(今と90日後)を二重円で描く。
- 書類前・一次後・内定後の一行目を用意する。
半年後、未来のあなたが今のあなたに礼を言う。その場面を僕は何度も見てきた。次は、あなたの番だ。年収交渉は、ワクワクを正式な約束に変える、静かな祝祭だ。設計図を持って、行こう。


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